約 1,206,991 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/379.html
「あなただけに我が儘を 後編」/黒ブキ◆lg0Ts41PPY R18 カーテンを締め切っているとはいえ、まだ午前の陽射しが満ちた部屋は 隠す物が無い明るさだ。 せつなの体にラブの指と唇を知らない部分など、もはや無い。 それでも、愛撫を待ちわび、淫靡な欲望に濡れた体を日の光の中で 見られるのには焼けつくような羞恥を覚えた。 ラブの視線から逃れるように顔を背け、枕に横顔を押し付ける。 「もう、濡れてるね…」 透き通る白磁のような体の中で、そこは鮮やかな紅を掃いたように染まっている。 淡い桃色から中へ向かうほどに、赤く色付いた花弁。 秘唇をくいっと押し広げられると、熱い滴が流れるのが自分でも分かった。 「ここも、まだ触ってないのに硬くなってる」 仰向けになっても少しも形の崩れない、白く豊かな双丘。 その頂を飾る、いつもは肌の色に溶けそうな淡い桜色の蕾。 今はほんのりと色づき、可愛らしく小さな芽を尖らせている。 「早く触って欲しいよね…?」 「あっ!あんっ…あ、あ、あ、…やっ、あ…ラブぅ…意地悪しないでぇ…」 「大丈夫。あたしの方が我慢出来なくなってきたから」 ぷくりと膨れた乳首をくりくりと摘ままれ、せつなは身悶えた。 ただこれだけの事で、頭から爪先まで信じられないくらいの快感が突き抜けた。 もっと触って欲しい。めちゃくちゃに泣かせて欲しい。 ラブになら、何をされてもいい。 ラブが望む事なら何でもする。 「せつなのカラダ、全部見たい…」 うっとりと、歌うようにラブは呟く。 せつなの感じてる顔が見たい。 せつなが気持ちよくなってる声が聞きたい。 乱れて、狂って、それでも欲しがって泣くせつなが見たい。 「すき。せつな、大好き…可愛い…」 「んっ!あ…っ?…あんっ…ーーっ!」 「あたしのモノだよ。全部、全部、誰にも触らせないんだから…」 そう、囁かれ、優しく乳首を吸われ、濡れた入り口を浅く抉られた。 痛い程に脈打っていた一番感じる突起を摘まれ捻られる。 その途端、せつなは小さく叫び、腰が大きく跳ね、ビクビクと震えた。 「…え?…あれ?」 真っ赤な顔で呆然としているせつなをラブはきょとんと見つめる。 「あの、ひょっとして、イッちゃった…?」 「……ーーっ!」 「…あれ、だけで……?」 「…だって…久しぶり、だったから…」 せつな自身も信じられない。 またさっきとは違った羞恥に全身が熱い。 どれほど餓えていたのか。 どんな言い訳も誤魔化しも通用しないくらいに分かってしまっただろう。 「ふぅん、そっかあ…」 「やっ!だめぇ…っ!まだ、あっ、あっ、やっ、やんっ…んんっ…」 「まだまだ足りないよね?まだ、たくさん欲しいよね?言ってよ、せつな…」 「ああっ、ああっ、!んっ、くぅ…はぁぁ…あ…」 「ねぇ…ここ、好きだよね…イイ?」 「…っ!すき…ラブ、好き。ラブが、好きなの…あくっ、くぅ…すき…好き…」 足りない。こんなのじゃ、全然足りない。 もっと欲しい。お願いだから。恥ずかしさも、何もかも忘れさせて。 せつなは大きく足を開き、自分からラブを求める。 足の間に顔を埋めてきたラブを歓喜の声で迎え入れた。 ラブは充血し、膨らみきったせつなの快楽の花芯に舌を絡め、吸う。 唇で挟み、柔らかく力を抜いた舌で陰核を包み込むように嘗め回すと、 せつなは咽び泣き、蕩けそうな快感に酔った。 ラブはせつなが達しそうな気配を見せると、それを敏感に察知し、 愛撫のリズムを変え、他の刺激を与える。 深く、浅く、中を掻き回し、素早く引き抜く。 せつなの中はきつく締まり、小さな口が指をしゃぶるように吸い付いて来る。 その感触を楽しみながら、手のひらの中でふるふると形を変える胸の尖った中心を 指で弾いたり、捏ね回したり。 唇を吸い、甘く舌を絡ませ、愛撫を欲しがる陰核も忘れずに弄くり玩ぶ。 少しずつタイミングを変えながら、指も舌も唇もすべて使い、余す事なくせつなを堪能する。 せつなは達しそうになっては焦らされ、かと言って休ませてもらえる訳でもなく 延々と絶頂寸前の快感を味あわされた。 果ては見えているのに、そこへ昇りつめそうになると、ふと遠ざけられてしまう。 もう苦しい、早く逝かせて欲しい。 まだ嫌。永遠にこの時が続いて欲しい。 「あっあっあっあっ、アッ、ーーっっ!んーっ!んーっ!」 ラブが中と外、胸の先を同時に強く刺激してきた。 頭が真っ白になる。 「せつな、イクとこ…見せて…」 顔を背けようとするせつなの顎に指をかけ、視線を合わせる。 熱に浮かされたように喘ぐ姿を隠そうとするせつなをラブは逃がさない。 せつなは弓なりに背を反らせ、背筋を駆け上がる凄まじいまでの快楽に蹂躙される。 ピンと足を緊張させ、背中を引き吊らせた後、くたりとシーツの上に弛緩し、 また直ぐ様新たな快楽の波に翻弄される。 幾度目かの絶頂の後、息を弾ませしどけなく横たわるせつなにラブはキスの雨を降らせる。 せつなはそのまま絶頂の余韻に微睡みたくなる体を無理矢理起こし、 ラブと体を入れ換える。 ラブの引き締まった腿を抱え、まだ濡れそぼり、ひくついた秘所を重ね合わせた。 「…せつな?まだいいよ。休んで…?」 随分苛めた自覚はある。 あんなに焦らした後で、次は立て続けに何度も逝かせてしまった。 いくらせつなでも疲れていない訳がない。 まだ時間はあるのだから、そんなに急がなくても大丈夫なのに。 「嫌…。次は…ラブといくの…」 「せつな…」 「私が…ラブを気持ちよくさせたいの…」 ぶるっ…と、せつなの肌が粟立つ。 ゆっくりと腰を前後させ、回す。 重なった場所から聞こえる濡れた音が自分の体液だけでは無いことを感じ、 せつなは胸を高鳴らせる。 「んっ…んんっ、はぁっ…せつなぁ…いいよぉ…」 せつなを蹂躙することで昂ったラブの秘所は既にたっぷりと蜜を湛えている。 せつなの動きに合わせて、ラブの声が快楽に溺れてゆく。 それが嬉しくて、ラブを更に感じさせようと懸命に腰を揺らせば、快感は自分にも返ってくる。 高まり過ぎた官能に意識を持っていかれそうになる度に、愛撫が止まってしまう。 このままではラブが達する前に限界が来てしまいそうだ。 せつなは意識を繋ぎ止めようと、懸命にラブの瑞々しい肢体をまさぐる。 小振りだが弾力のある乳房を揉みしだき、屈んで唇をねぶる。 「んんぅっ…せつなぁ、ねっ、無理…しちゃ、ダメ…っ、あんっ…」 せつなは涙を溜めながら、イヤイヤをするように首を振る。 ラブが欲しい。ラブといきたい。 痛々しくなるくらい、体を震わせながら必死に、もう蕩けきった秘肉を絡み付けてくる。 その姿にラブの中に生まれる愛しさと征服欲。 何て可愛い子なんだろう。 せつなは体だけでなく、心まで悦びで満たしてくれる。 濡れた瞳。芳しい肌の匂い。脳髄を蕩けさせるような艶めいた声。それらすべてが自分の為だけに注がれている。 ラブはその事実だけで果ててしまいそうだった。 「…じゃあ、手伝うね…」 「……?」 ラブが下からせつなを揺さぶるように腰をくねらせると、 せつなは悲鳴に近い泣き声を上げ、崩れ落ちてきた。 「やっぱり、あたしはこっちの方がいいみたい…」 せつなを再び押し倒すと、深く噛み合わせるように秘唇同士を擦り付ける。 スラリと伸びた白い脚を思い切り開かせ、その中心に息づく陰核同士を 細かく擦り合わせ、弾き合う。 「あぁぁあぁっ…!ダメっ、それダメぇっ…!」 「気持ち、いいでしょ…?ねぇ、せつなは?…はぁっ…っ!んっ、あぁんっ!」 「ーーーっ!…んーっ、はぅ……っ!」 「せつなぁ…はぁ、んっ、もう、少しだからっ!ねっ、あたし、もう…すぐっ!」 小刻みに腰を使い、再び主導権を握れた事に軽く安堵する。 せつなに敵うことなんて何一つないのだから、せめてこれだけは せつなを泣かせる側でいたかった。 せつなはもはや喘ぎ声すらろくに上げられず、荒い息で虚ろな瞳にただラブだけを映している。 ガクガクと震えるせつなの腰を無理矢理押さえながら、ラブは自分も 昇り詰めるべく腰使いを早めてゆく。 ラブが絶頂を迎えたのと同時に、せつなは意識を手放した。 ラブは汗みずくになりながら、大きく胸を弾ませ、せつなの髪を撫でる。 頬に唇を寄せ、しっかりとせつなを胸に掻き抱くと、そのまま二人の 汗を吸い込んだベッドに沈み込んだ。 このまま眠ってしまいたいけど、今はせつなの寝顔を眺めていよう。 たぶん、せつなはすぐに目を覚ますはずだから。 ゆっくり眠っている時間は無い。 その事は誰よりもせつなは身に滲みて理解しているから。 ぬくもりに包まれて目を覚ます。 目の前に愛しい少女が自分を抱き締め、微笑んでいる。 髪を梳くしなやかな指。優しく細められた目。 微睡みから覚めたせつなに柔らかく口付けをくれる甘い唇。 こんな寝覚めがある事を忘れていた。 もうこのまま死んでもいいとすら思えそうな幸福感。 「…ごめんなさい。私、寝てた…?」 「ほんのちょっとだよ。寝てた…って言うか、気絶してた?」 少しからかうような口調に頬が熱くなった。 どれほど乱れてしまったのか。 思い出すのが拒まれるほどに恥ずかしい。 でも気を失うように眠ったけれど、僅かな時間だったのも本当らしい。 日の落ちるのが早い冬の日差しはまだ充分に部屋に注がれていた。 「あー、あのさ、せつな。今さらなんだけど…」 「…なあに?」 「あたし、せつなに何かしてあげられる事、無いかな…?」 「………何、か…?」 「ほら、あたし頭悪いし、考えるの苦手だし…。あたしなんかに せつなを手伝える事なんて無いって分かってるけど…」 「………」 「でもね…ただ、せつなの連絡を待ってるだけじゃ嫌なんだ」 「…うん」 「何でもいい。せつなが、あたしに次に会う時にこうして欲しいとか、 逆にこれはやめて欲しいとか」 じっと見つめてくるせつなは、何かを迷っているようだった。 躊躇うように瞳を伏せ、またおずおずと上目遣いにラブを伺う。 「……あのね、本当に、何でもいい?」 迷いながらも口を開くせつなに、ラブは鼻息も荒く意気込んで目を輝かせた。 せつなが望むなら、出来る事は何でもする。 出来ない事は無理してでもやる。 「…メール、もっと欲しい…」 「…へっ…?」 「電話も、してくれたら…嬉しい」 もじもじと恥ずかしそうに、消え入りそうな声で呟く。 たぶん、メールを貰っても、毎回は返信出来ないと思うの。 でも、ラブが毎日どんな風に過ごしてるか。 お母さんやお父さん、美希やブッキーの事も知らせてくれたら嬉しい。 電話も、くれても滅多に出られないと思う。 それでも、メッセージ、残してくれたら嬉しい。 一日の終わりに、ラブの声を聞けたらすごく幸せだから。 だから…お願い。我が儘だけど、聞いてくれるの? 「あの、せつなさぁ…」 「…?」 「そう言うコトは、早く言って欲しかった…」 ラブは脱力感に耐えながらも、不安気に見つめるせつなに向き合う。 メールなんか、一日に何通でも送るよ! 今までは、せつなが忙しくて迷惑になったらいけないって我慢してたんだから! 返信なんか無くたっていいよ。そりゃ、たまーに『読んだよ』くらいの 返事は欲しいかもだけどさ。 せつながいいなら朝昼晩どころか、一時間に一回は送っちゃうんだから! 電話だってそーだよ!掛けまくっちゃうよ? 留守録、いつもいっぱいいっぱいまで入れちゃうから。 他の人の要件入らなくなっても知らないんだから! 顔を真っ赤にして捲し立てるラブにせつなはポカンとする。 「そんな事したら、ラブは一日中携帯放せないわよ…?」 「だからっ!それくらいしたいって事なのっ!あたしはっ!」 あああー、ホントにもうっ! ラブは枕に突っ伏してジタバタと身悶える。 「あの…ラブ…?」 「あ、ごめんなさいは言わなくていいからね!」 「…分かった」 「でもこれからは、こう言う事はもうちょい早めにお願いします」 「分かり、ました」 「うん…こっちこそゴメン。ちょっと、うろたえただけだから」 よいしょ!と顔を上げたラブは顔中で笑顔を作る。 せつなが大好きな笑顔を。 若干不安げにしているせつなの心配を吹き飛ばすように。 「でもさ、あたし、ほんっとー下らない事メールしちゃうよ? 学校行く途中に猫がいた!とか、今日はテストがあってヤダー!とか」 「うん、そう言うのがいいわ」 「留守録もさ、おはよー!とか、おやすみー!とか、ネタが無かったら歌とか歌っちゃうかも」 「それお願い。子守唄代わりに聴くわ」 「お?ホントに?じゃあレパートリー増やさなきゃ!」 クスクスと笑いながらベッドで戯れ合う。 今度こんな時間が持てるのはいつになるのか分からない。 だから、一瞬一瞬を惜しむように。 相手の何気無い仕草一つ、言葉や声の揺らめき一つを逃さず心に刻むように。 「嬉しいな。これからはせつなにいつでもメールしていいんだ」 「…でも、返事……」 「いいよ!絶対に読んでくれるんでしょ?返信したいって思ってくれるんでしょ?」 「…うん」 「だったら、せつながやり易いように何か考えようよ。定型文でも作って 何回かに一回は返信する、とかさ…」 「でも…そんなの…」 「だからさ、あたしがしたくてするんだから!ね?」 送っても送っても返信が来なければ、あたしが悲しむって思うんでしょ? そんなの全然いいから!あたしね、嬉しいんだよ。 ほんのちょっとでもせつながあたしのメールで笑顔になってくれたら。 ずっとせつなと繋がっていられるって思えるから。 次に会うときまで、色々胸に貯めておいてくれるんでしょ? 二人きりの時間は中々厳しいかもだけどさ、こう言う秘密の約束みたいなのって すっごくドキドキするよね。 「それにね、辛くなったらちゃんと言うから」 「…?」 「まあ、そんな事にはならないと思うんだけど、返信が無いのが寂しいとか、 電話ももっと出て欲しいとか…」 「………」 「そしたらさ、また一緒に考えようよ!どうすれば、もっと楽しくできるのか!」 二人で考えよう。離れていても、少しでも一緒に幸せを感じられるように。 せつなは滲んできた涙を隠す為にラブの首筋に顔を埋める。 離れていても、少しでも一緒に。 心の中は、いつでも同じ景色が見られるように。 「他には、何かある?あたしにして欲しい事。今できる事でもいいよ?」 帰りたい。ずっと側にいたい。 本当は、願う事はそれだけ。でも、それは今は言えないから。 「…今、出来る事?」 「うん!まだ夜までは時間あるでしょ?どこか出掛けたいとか、一緒にしたい事とか…」 「何でもいいの…?」 「まかせて!」 本当は、このままずっとこうしていたいけど。 それは言わないのが華だろう。 少しは格好もつけておきたいし。 と、ラブは誰ともなしに心の中で呟く。 「……じゃあ、ね…?」 「なになに?何でも言って!」 もう一度、最初から。 そう、唇に息のかかる距離で囁く。 せつなの瞳を彩る蠱惑的な色。 ラブは脊髄から魂が引きずり出されそうなくらいゾクゾクする。 思わず唇を舐め、ゴクリと喉を鳴らす。 「あの…それは、フルコースで…?」 「そう。キスから、最後まで」 「……いいの?そりゃ、あたしは嬉しいんだけど…」 「うーん……」 せつなは可愛らしく小首を傾げ、歌うように囁く。 出掛けたり遊んだりは、美希やブッキーと一緒でもとても楽しいわ。 家で過ごすのも、お父さんやお母さんが一緒なのもとても幸せよ。 「でも、これはラブと二人きりの時しか出来ないし、したくないから」 「…なるほど」 「今度は、私がラブにしましょうか…?ラブが私にしたのと同じ事…全部」 「…全部……?」 「そう。全部、最初から。覚えてるもの…」 クスクスと笑うせつなを見て、ラブはちょっと身を引いて逃げる。 それはちょっと遠慮したい。 そう、顔にありありと書いてあった。 「酷いわね。自分は逃げたくなるような事、私にしたの?」 「いえいえ!でも、あたしせつなほど体力無いし…」 まだ笑っているせつなに覆い被さり、顔中にキスをする。 「今度は優しく、やさしー…く、させてもらいます…」 「分かったわ。それで、そのあとは一緒にお風呂に入りたい」 「了解です。準備させて頂きます」 「で、お風呂上がったら、一緒に夕ごはん作りましょ?」 「?!」 「お父さんと、お母さん。みんなで食べたい」 「…うん、そうだね」 たっぷり二人の時間を過ごしたら、また家族の時間に戻ろう。 せつなの家はここだから。 また家族みんなで、いってらっしゃいと見送ろう。 また、お帰りなさい、と迎える為に。 「あ!でもさ、時間勿体無いから簡単な物にしようね!冷凍庫にハンバーグのストックあるから それならすぐできるよ!」 「もう、ラブったら…」 せつなの呟きを遮り、再び唇を重ねる。 別れはすぐそこに迫っている。 でも明日から、せつなの為に出来る事がある。 ほんの小さな事だけど、せつながこちらを少しでも身近に感じられるように。 同じ空気。同じ風景。同じ時間を生きている証を。 それが何よりも嬉しく、胸が踊る。 時は迫り、二人きりの時間はもうすぐ終わりを告げる。 でも、今回は泣かずに済みそうだった。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/97.html
Tears of the clover:episode.7 美希にお礼と別れを言うと、せつなは桃園家へと歩き出した。 アカルンで帰れば早いのだが、月が綺麗だったので何となく歩きたい気分になり、舗装されたアスファルトの小道を黙々と歩く。歩きながらせつなは考える。 ラブとのこれまでの様々な出来事。イースとして使命を帯び、コードネーム『東せつな』として近づいた出会い。少しずつラブを知っていき、自分が自分で無くなっていく感覚。ラブとメビウス、その両方への相反する想いで心がふたつに裂けてしまいそうだった。 スタジアムのあの日、ラブはそんな自分を抱きしめてくれた。壊れかけた心ごと、強く強く。 美希と話して本当に良かった。ラブへの揺るぎない想いに気づくことが出来て、今、せつなの感情は澄みわたっていた。 「せつな…ちゃん?どうしたの、こんな遅くに」 声のした方を向くと、街灯に照らされ、驚いた表情でこちらを見つめる祈里の姿があった。 「やだブッキー、偶然ね。どうしたの?」 「コンビニの帰り…せつなちゃんは?」 「美希の家で話し込んじゃって、すっかり遅くなっちゃったの」 「そう…もし良かったら、遅くなりついでにもう少し話さない?」 そう言いながら祈里が指差したのは、24時間営業のファミリーレストランだった。 適当に空いている席に座ると、すかさず店員が水を持ち注文を取りに来る。 「私はカフェオレ…せつなちゃんは?」 「じゃあ、同じものを」 「カフェオレふたつ下さい」 店員が去ると、せつなは笑顔で祈里に話しかける。 「珍しいわね、ブッキーがわたしを誘うなんて」 せつながどこまで気づいているのか心配だったのだが、杞憂だったようだ。どうやら自分には疑いは持っていないらしいとわかって、祈里は心の中でホッと安堵のため息をついた。 「そんなこと…ないわよ?最近あんまり話してなかったし、話したかったの。…ラブちゃんは元気?」 「ん…元気、と言いたいところだけど、あんまり元気ないかな」 「…喧嘩でもした?」 「喧嘩でもないんだけど…そうね、美希にも聞いてもらったし、祈里にも言っちゃおうかな」 「なあに?」 「ラブね、いるみたいなの…ほかに好きな人が」 驚きで、一瞬身体が震えてしまった。だが、そんな祈里の動揺に、せつなは全く気づいていない。 「それでこの前、美希と丘で出会って、嫌な気持ちを忘れるみたいにして、その…美希と…しちゃったの…キスを」 頬を染めながら恥ずかしそうに告白するせつなに、祈里はただ、ただ、拍子抜けする。ラブという恋人がありながら、美希とキスしてしまったなどと、よりにもよって私に話すなんて。よほど私を信頼してくれているのだろうか。 そう思うと、罪悪感が急激に祈里の中を駆け巡った。 そんな祈里の胸中など、まるで知る由もないせつなは話を続ける。 「…さっき、美希に好きって言われたわ。わたしが誰を好きでもわたしのことが好きだって、美希はそう言ってくれた。 そのおかげでわかったの。わたしね…ラブが好き。ラブが今誰を好きでも、これから先誰を好きになっても、やっぱりラブが好き。この気持ちだけはずっと変わらない。イースだった頃から、ずっと…。 ラブはわたしに愛をくれたわ。愛すること、愛されることの素晴らしさを教えてくれたの。 ラブはわたしにこの世界での居場所をくれた。いつの間にか…ラブのそばに居ることが、ラブの存在そのものが、わたしの居場所になってた。 だから…今度はわたしがラブの居場所になりたいの。ラブがフラフラって何処かに行ってしまっても、いつだってわたし、ラブを待っていたい。駄目って言われても勝手に待ってる。そうしたらラブは、たまにはわたしのところにも帰って来てくれるかなって」 せつなの言葉に打ちのめされ、祈里はしばし、呆然としていた。 せつなは何て…何て子なのだろう。裏切られてもなお、愛し続けていくと言うのか。 自分にこんな愛し方ができるのだろうかと、祈里は自問自答してみる。答えは一目瞭然だった。できるわけがないわ。敵わない…。 自分のそれと比べるには、せつなの愛はあまりにも大きくて、盲目で、純粋すぎた。 ラブとの関係に置いて、祈里は常に、『自分』が先にあった。 自分が好きだから、好かれたい。自分が逢いたいから、逢いに来てほしい。自分が…、自分が…。 だけど、せつなはそうじゃない。いつだってラブを重んじている。 最初から叶わない恋だったんだ。だって、こんなに凄い女の子がライバルだったんだもの。 堪えきれずにこぼれ落ちた涙を、せつなに気づかれないようにそっと袖でぬぐうと、祈里は偽りのない言葉を口にする。 「うん、ラブちゃんはきっとせつなちゃんのところに帰って来る。私、信じてる!」 「…ありがとう、祈里」 ブッキー、ではなく祈里、と。せつなは確かにそう言った。 自分に寄せられた親友に対する深い愛情を確信して、祈里は思う。ラブとの秘密を墓場まで持って行くのだと、そう心に誓った。ラブや美希や自分に向けられた、こんなにも穏やかなせつなの愛に報いるために。 「じゃあね、おやすみなさい」 別れを告げ、再び歩き出したせつなを見送ると、祈里はリンクルンを取り出した。 『…もしもし』 ラブの声がいつもより低く響くのは、電話越しのせいばかりではないだろう。 「今、せつなちゃんに会ったの。…久しぶりに色々話したよ」 『…そっか』 「せつなちゃんたらね、私が裏切ってること、まるで気づかないの。そしてね、ラブちゃんがフラフラしても、いつでも帰って来れる居場所になるんですって。全く…スケールが違うよね。大きすぎるよね…」 電話の向こうで、ラブが嗚咽を洩らし始めていた。 「私、わかった。ラブちゃんを一番愛してる人が誰なのか。…だから、今夜でおしまいにする。ラブちゃんを好きな祈里は、今夜でおしまい。明日からはまた、元の幼なじみのブッキーに戻るね」 『祈里…ごめんね…ごめんなさい…』 ラブの嗚咽が洩れ聞こえ、胸が焼け付くような苦しさに襲われるが、それでも祈里の決意は変わらない。 「駄目だよ!ブッキーって呼んで。私たち、今までよりもずっと仲良くなろう。せつなちゃんの愛に恥じないような、すて…すてきな…親友に…なろうね」 最後まで言えた…涙で声がつまりながらも、ラブちゃんにちゃんとお別れが言えた。 「さようなら…私のラブちゃん」 ラブが何か言う前に通話を終わらせる。月の光に浮かびあがった祈里の頬には、幾筋も幾筋も涙の跡が伝っていた。 「ただいま」 せつなが桃園家の玄関のドアを開けた。パタパタとスリッパの足音がして、笑顔のあゆみが迎え入れる。 「おかえり、せっちゃん。遅くまでお邪魔して、美希ちゃんにちゃんとお礼言ってきた?」 「はい…レミおばさまがよろしくって言われてました。あの…ラブは?」 「それが珍しいのよ。お腹空いてないから夕御飯いらないって。部屋で宿題してるわ。せっちゃん夕御飯は?」 「美希のところで色々頂いてきたので、あまりお腹が空いてなくて…わたしも部屋で宿題してきます」 あゆみに夕食を断り、せつなは階段を上った。階段を上り終え、廊下を進み、ラブの部屋の前に立つ。はーっと大きなひと息を吐いてから、ゆっくりと3回ノックをした。 コンコンコン わかってはいたが、やはり返事はない。 「ラブ、わたしよ。…入るわね」 ガチャリ ドアを開けると、部屋の中は薄暗く、窓からは月明かりが差し込んでいる。その明かりに照らされ、床に体育座りをしているラブが見えた。背をベッドにもたせ掛け、両腕で膝を抱え込み、顔は俯いていてその表情は見えない。 せつなはラブのそばに行き、隣に腰かける。 「ねぇラブ…何も言わないでわたしの話を聞いてくれる?」 こくん。ラブの頭が少しだけ頷いて、せつなの言葉を聞いていることを示した。 その仕草を確かめると、せつなは凛と前を向き、隣でうなだれる少女に向かって口を開いた。 「わたしね…美希に好きって言われたの。すごく嬉しかった。わたしも美希が好きよ。 でも、どこか違うの。わたしの『好き』と美希の『好き』は、同じようで、全然違ったの。 わたしの『好き』はラブの形なの。ラブにしか当て嵌まらないみたい。 だけど、ラブの『好き』の形は、今変わろうとしてる。わたしの形から、別の形に…。 だけど、わたしなら形を変えられる。あなたの望むどんな形にもなる。だから…だから…これから先も、ずっとあなたのそばにいさせて…」 声にならない嗚咽で、ラブの肩が震える。 「それだけ言いたくて…じゃあおやすみなさい、ラブ」 「待って!」 自室に戻ろうとするせつなの手首を、ラブが咄嗟につかんだ。 顔を上げたラブの瞳は、涙で睫毛まで濡れて、くしゃくしゃに崩れている。 「ごめん、せつな、ごめんなさい…。あたし、今までちっともわかってなかった。どれだけせつなが大切な人だったのか、今初めてわかった。あたし…あたしね」 言いかけたラブの唇に、せつなが人差し指をそっと当てる。 「いいのラブ、いいの…何も言わないで…ぎゅうってして…」 ラブはせつなの細い腰を引き寄せ、その身体を強く強く抱きしめた。 「もっと強く、ぎゅうってして…」 せつなの身体はこんなに細かっただろうか。ずいぶん長い間、せつなを抱きしめていなかった気がして、ラブはその腕により一層の力を込める。 ふっと、ラブの胸にふたりの幼なじみ達の幻影が去来する。 ごめんね、みんな…。あたしが我が儘言って欲張ったから、みんなを泣かせて傷つけてしまった。みんなみんな、あたしのせい。 だけど、これからは…。 暗い道でさ迷う自分に、月の光のように、祈里がたったひとつの方向を指し示してくれた。そして、腕の中にいるひとの大切さにようやく気づけたのだから。 もしもまた迷うことがあるなら、その時のために、祈里が捧げてくれた想いを背負って、これから先も生きていく。弱いあたしを戒めてくれるだろう、十字架のような彼女の心を背負って。 窓から差し込む月明かりに照らされ、ふたりは抱きしめあう。心の中の様々な傷も罪も、頬を伝う涙も、重ね合わせた唇の熱さも、月だけがそのすべてを見ていた。 終
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/923.html
桃園家のおせち料理/一六◆6/pMjwqUTk <年末、桃園家の台所にて> あゆみ「ええっと、これで伊達巻きと田作りと黒豆が完成ね。あとは……」 せつな「お母さん、昆布巻き、巻き終わったわ」 ラブ 「あたしも、お煮染め用のレンコンとお芋、切り終わったよ」 あゆみ「ありがとう。二人が手伝ってくれて大助かりよ。じゃあラブ、次はこれをお願いね」 ラブ 「うっ……ニンジン……」 せつな「ニンジンも、おせち料理に使うの?」 あゆみ「ええ。大根と一緒に千切りにして、紅白なますにするの。あとは、梅の花の形に切って、お煮染めに入れるのよ。ニンジンの赤が彩りになって、とってもきれいなんだから」 せつな「へぇ、お花の形にするなんて素敵ね。それで、あのぉ、お母さ……」 ラブ 「よぉし。せつな! あたしが切り方を教えてあげるね」 せつな「……ええ、ありがとう、ラブ」 ラブ 「まず、ニンジンを輪切りにして、こうやって切り目を入れてぇ……」 せつな「なるほど。円周を五等分にするように切れ目を入れて、その切り目と切り目の間が一枚の花びらになるように、まぁるく切っていくのね」 あゆみ「そうそう。綺麗な梅の花になったわねぇ、せっちゃん。ラブも、包丁の使い方がホントに上手になったわ」 ラブ 「えっへん!」 せつな「嬉しい。ありがとう、お母さん」 あゆみ「それで? せっちゃん、さっき何を言いかけたの?」 せつな「……ううん、何でもないの」 ラブ 「そう言えばさ、お母さん。緑の野菜って、おせち料理にはあんまり使わないよね?」 あゆみ「そうねぇ。おせちにはやっぱり、日持ちがするものじゃないと。だからどうしても、野菜は根の物が多くなるわね」 せつな「じゃあ……」 あゆみ「ええ、ピーマンも使わないわよ、せっちゃん。うふふ。ひょっとして、さっきからそれが気になってたの?」 せつな「あ……いや、その……」 ラブ 「なぁんだ、せつなったら。あ、でもそう考えたら、ちょっとズルい。ニンジンはちゃぁんとおせちに入ってるのにぃ!」 せつな「それとこれとは、話が別よ」 あゆみ「コホン。二人とも、来年こそは好き嫌いしないのよ?」 せつな「はい」 ラブ 「はぁい」 あゆみ「うん、よろしい」 ラブ 「あ、でもさ、お母さん。お雑煮は長く置いておくわけじゃないから、緑の野菜、使えるよね? 根の物じゃなくて、葉の物も使えるんじゃない?」 あゆみ「(ギクッ)」 せつな「お雑煮って、汁物の中にお餅が入っているのよね? となると、白いお餅にぴったりの色と言ったら、やっぱり緑かしら」 ラブ 「うん! 彩りとしてぴったりなのはぁ……せーのっ!」 ラ&せ「ホ・ウ・レ・ン……」 あゆみ「そ、そうそう! 鏡餅を飾るお三方、出しておかなくっちゃ。お父さーん!」 ラブ 「もうっ! お母さんってば、ズルいよぉ」 せつな「クスッ、フフフフフ……」 ラブ 「アハハハ……」 ――そして年が明け―― <元旦、桃園家のリビングにて> 圭太郎「おおっ! やっぱり我が家のおせちは、旨そうだなぁ!」 せつな「うわぁ、重箱に入って並べられると、一層鮮やかで、美味しそうね!」 あゆみ「でしょう? それぞれの料理にはね、一年の幸せを願う、いろんな意味があるのよ。はい、せっちゃん。黒豆、どうぞ」 せつな「ありがとう。……甘くて美味しい。このお料理にはどんな意味があるの?」 圭太郎「黒は、厄除けの色と言われていてね。健康であることを、「マメだ」とも言うことから、一年元気で過ごせますように、という願いが込められているんだよ」 ラブ 「なんかおせち料理の意味って、お父さんのオヤジギャグみたいなのも多いよね。「よろこぶ」に掛けて「昆布巻き」とか、「めでたい」に掛けて「鯛の尾頭付き」とかさ」 圭太郎「アハハ……それもそうだなぁ」 せつな「うふふ、ラブったら。そう……黒には、そんないい意味もあったのね」 あゆみ「ええ。せっちゃんが好きな赤も、魔除けの色と言われているわ。白は清めの色だから、紅白でおめでたい色、って言われているのよ。だからほら、昨日二人が作ってくれた紅白なますもそうだし、蒲鉾も、赤と白でしょう?」 せつな「ええ。紅白に並んだ蒲鉾って可愛いわね。でもこの色は赤と白って言うより、何だか……」 ラブ 「せつな! んふふふ~、これ見て!」 せつな「なぁに? ラブ。お皿の上に、紅白なますに海老、それから昆布巻きに黒豆??」 ラブ 「ほら、この色合い……(小声で)キュアパッションです!」 せつな「あ……そ、それよりも、こっちの方がそっくりよ!」 ラブ 「えっ、なになに? 蒲鉾ばっかりこんなにお皿に並べちゃって。そしてその上に、ほどいた伊達巻? ああ、改めて見ると、蒲鉾の赤って、赤というよりピンク……え、もしかして……あたし!?」 せつな「……。(コクリ)」 圭太郎「ん? ラブもせっちゃんも、何をコソコソやってるんだ?」 あゆみ「あら、二人とも顔が真っ赤よ? お屠蘇が回っちゃったのかしら」 ラブ 「あ……アハハ、アハ、アハハハ……。せつな! 年賀状が来てないか、見に行こうよ!」 せつな「そうね、ラブ!」 あゆみ「あらあら、二人揃って行かなくてもいいのに。どんだけ仲良いのかしら、あの子たち」 初春や 仲良きことは 美しきかな ~おわり~
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1196.html
幸せは、赤き瞳の中に(第4話:再会) 夜もとっぷりと更けた、ラビリンスの居住区。立ち並ぶ集合住宅は、外から見るとどれも判で押したように同じ大きさ、同じ形の建物だ。その一棟の片隅にある小さな部屋に、今、灯りが点いた。 「どうぞ、上がって」 「お邪魔しまーす!」 玄関先で靴を脱ぐ二人の少女は、せつなとラブ。ここは、ラビリンスでのせつなの住まい。彼女が一人で暮らしている部屋だ。 一足先に上がってラブにスリッパを差し出したせつなは、少し困ったような表情だが、その口元は嬉しそうに緩んでいる。ラブの方はワクワクを絵に描いたような顔で、部屋に入るやいなや、わぁっと歓声を上げた。 「広いじゃん、せつな。ベッドも凄く大きい!」 えーっと、ここは何かなぁ……などと大きな声で言いながら、ラブが幾つかの扉を開けて、楽しげに中を覗き込む。そして最後はきれいに整えられたベッドめがけて、勢いよくダイブした。 もう、と呆れた顔をしてみせてから、せつながクスリと笑う。そしてラブの荷物を机の上に置くと、自分はベッドの縁に腰かけた。ラブもすぐに起き上がって、その隣に座る。 ベッド、机、本棚、姿見。どれも桃園家のせつなの部屋にある物より一回りか二回りほど大きいが、それらは全て、桃園家の部屋と同じ配置で置かれている。 それ以外には、家具らしい家具は無い。女の子の一人暮らしにしては、殺風景なくらい必要最小限のものしか置いていない部屋。改めて見回したラブは、机の上に置かれた写真立てに気付き、小さく微笑んだ。 それは、あの最後の戦いから帰った後、タルトやシフォン、アズキーナも一緒に家族で撮った写真だった。ラブも同じ写真を、同じように自室の机の上に飾っている。が、そのことには触れず、ラブはせつなに微笑みながら、おどけた調子で言った。 「やっぱきちんと片付いてるねー、せつなの部屋。あたしなんか、つい散らかしちゃうのにさ」 「ラブの部屋は、物が多すぎるのよ」 そういつもの調子でたしなめてから、せつなはまた少し困った表情に戻って、ラブの顔を見つめた。 「それよりラブ。本当に泊まっていったりしていいの? お父さんとお母さんが心配してるんじゃ……」 「大丈夫だよぉ。お母さんには、ちゃんと言って来たもん」 「でも……」 ラブの即答とは対照的に、せつなが曇った顔のままで口ごもる。 今朝、せつなは四つ葉町での休暇を早めに切り上げてラビリンスに戻って来たのだが、驚いたことに、ラブも後から彼女を追ってラビリンスにやって来た。ちょうどこちらへ戻るところだったウエスターとばったり出会って、彼に頼み込んで連れて来てもらったのだと言う。しかもラブは、着替えを詰めた大きなスポーツバッグを肩にかけ、泊まる気満々の格好で現れたのだ。 いくら移動が可能と言っても、ここは異世界。友達の家にちょっと遊びに行くのとは、わけが違う。だが、ラブは事もなげに、こんな言葉を付け足した。 「大丈夫だって! せつなの家に泊まるって言ったらさ、お母さんが、せっちゃんのところなら安心だわ、だって」 「……ホントに?」 せつながそれを聞いて、まだ心配そうな表情を残したまま、うっすらと頬を染める。その顔を見て、ラブの言葉にさらに力がこもった。 「うん! だから、明日からせつなの手伝い、あたし、精一杯がんばるよっ!」 「明日から、って……。そんな、ダメよ。せっかくの夏休みなのに」 「もう。わかってないなぁ、せつなは。夏休みだから、あたしにもせつなの手伝いが出来るんでしょう?」 再び困ったような表情になるせつなの隣で、ラブが得意げに胸を張る。 「あたし、この前のお料理教室で、せつなの手伝いが出来て、すっごく嬉しかったんだ。だから、もしまた手伝えることがあるなら一緒にやらせてよ。だって、せつなの夢は、あたしの夢でもあるんだから」 「ラブの……夢?」 「そう!」 ますます得意げにニッと笑ってみせるラブを、せつなは一瞬、不思議そうな顔で見つめる。そして、フッと顔をほころばせてから、うん、とひとつ頷いた。 「わかったわ。ありがとう、ラブ」 「やったぁ!」 「でも、そう長い間はダメよ?」 「え~、なんで?」 「まだ夏休みの宿題も、終わってないんでしょう?」 「うっ……それは……」 途端に目を泳がせるラブに、せつながクスクスと笑い出す。 この部屋で、こんな風に笑ったことなんてあっただろうか、とふと思った。 ラビリンスを笑顔でいっぱいにしたい――そう思ってここに戻って来たけれど、ここでの自分の笑顔のほとんどは、ラビリンスの人々のために――人々の緊張をほぐしたり、敵意が無いことを伝えたりするために浮かべるもののような気がする。 ――せつな自身が幸せな姿を見せなくてどうするの。 昨日の美希の言葉が蘇った。いや、もしかしたらさっきから、心の中にあったのかもしれない。 そして、蘇ったその言葉は、初めて聞いた時よりずっと優しく、せつなの心に沁みた。 「あーあ、失敗しちゃったなぁ。宿題、持って来てせつなに教えてもらうんだったよぉ」 そんなことを言って頭を掻いているラブに、もう一度小さく微笑んで、せつながベッドから立ち上がる。 「じゃあ、お風呂の準備してくるから。準備が出来たら、ラブが先に入って」 「え、シャワーだけじゃなくて、お風呂もあるの?」 「え……ええ。小さなバスタブだけど」 「そっか。じゃあせつな、一緒に入ろう!」 「ちょっ……何言ってるのよ!」 慌てるせつなの手を取って、ラブが俄然元気になって、ベッドから立ち上がる。 「だって、お風呂場の使い方、わかんないんだもーん。さ、せつな早く!」 「ちょっと、ラブ! まだお湯も入れてないんだから!」 いきなりお風呂場に向かおうとするラブに、せつながもう一度、クスリと笑った。 部屋の灯りが、いつもより明るく、あたたかい。何だか夢を見ているような気持ちで、せつなはそれに半ば納得し、半ば不思議に思っていた。 幸せは、赤き瞳の中に ( 第4話:再会 ) 次の日、ラブはせつなと一緒に、ラビリンスの中心地から少し離れた場所へ出かけた。 かつて見た、人々が一糸乱れぬ隊列を組んで歩く光景は、今のラビリンスではもうすっかり見られなくなったらしい。全員が同じグレーの服に身を包んでいるところは変わらないが、人々は皆、思い思いの方向に、思い思いの速さで、時々立ち止まったり急ぎ足になったりしながら歩いている。 すれ違う人の中には、せつなの顔を見て微笑みながら会釈をする人、せつなの方から声をかける人も多かった。そんな光景を見るのが何だかとても嬉しくて、ラブは自分も元気よく挨拶しながら、隣を歩く親友の横顔を誇らしげに見つめた。 やがて二人がやって来たのは、低い塀で囲まれた広大な敷地だった。中に入ると、石や木の柵で区切られた花壇や、まだ植えられたばかりの苗木が二人を出迎えた。 「ここを、四つ葉町公園のような憩いの場にしたいの」 「へぇ! いいね、それ」 せつなの言葉を聞いて、ラブの顔がぱぁっと輝く。 ウエスターとサウラーも一緒に政府に進言し、公園の設計も、三人が中心になって考えたのだと言う。もっとも、ウエスターの要望は公園がどうこうと言うより、「絶対にドーナツの店を出す!」というただ一点だったらしいが。 「でも、ラビリンスには公園に植えられるような植物なんて、なかったから」 「うん」 「異世界から、木の苗や花の種を持って来てね」 「うんうん」 「ラビリンスに適しているものを選んで、公園に植えられる大きさにまで高速栽培させたの」 「う……ん?」 話に付いて行けなくなったのか、ラブが頷くのをやめて、首を傾げる。 せつなは、ひょろひょろと頼りなく並んだ、まだ並木とはとても言えない小さな木々を、愛おしそうに見つめた。 「この木が大きくなるまでには、まだまだ時間がかかりそうだけど」 「うん。でも、それを待つのも楽しいよね。どんどん変わっていく公園を見られるのって、なんか楽しくない?」 ラブが、さっきまでとは打って変わった力強い声でそう言うと、せつなと並んで、まだ柔らかい木の葉を、ちょん、とつつく。 せつなは少し驚いたような表情でその横顔を見つめてから、嬉しそうに、そうね、と頷いた。 「ところで、せつな。今日はお料理教室の準備に来たんじゃないの? それとも、何か別の用事?」 「ううん、ちゃぁんと料理教室のための用事よ」 不思議そうに尋ねるラブに、少し悪戯っぽく微笑んで、せつながずんずんと公園の中へ入っていく。 やがて公園の一番奥まで辿り着いた時、突如そこに開けた景色に、ラブは驚いて目をパチパチさせた。 そこに広がっていたのは、柔らかそうな土の黒と、みずみずしい緑のコントラスト。ラブたちの世界のものとそっくりな、野菜畑だった。 「ラビリンスの食材は、野菜も全て工場で、人工的に作られているの」 せつなが静かな声で説明する。 「でも、やっぱり自然の土や光で育ったものの方が、美味しいんじゃないか、って……」 それで試験的にここで野菜を育て、収穫したものの一部を、料理教室でも使わせてもらっているのだと言う。 丁度せつなが話し終えたところで、畑の隅にある小さな小屋の扉が開き、中から一人の老人が、ゆっくりと姿を現した。 「こんにちは~! あの、今ちょっといいですか?」 せつなが両手をメガホンのようにして大きな声で呼びかけてから、彼の方に向かって歩き出す。ラブもその後ろを付いて行きながら、わずかに眉根を寄せた。 (あれ? あの人、どこかで会った、ような……) 老人は、せつなの言葉に特に反応も見せず、うつむき加減でゆっくりと歩いて来る。 銀髪と言うより白髪に近い髪が、頭の周りにだけ残った髪型。少し腰を曲げるようにして歩く姿は見るからに老人だが、その足取りは意外としっかりしている。 そして彼が、そこに置いてあった大きな袋を抱え上げた瞬間、ラブが、あっ、と小さく声を上げた。 「やっぱり……。この人、あの時のおじいさんだよ」 「え?」 せつなが不思議そうに、ラブと老人とに交互に目をやる。 「ほら、あたしたちがメビウスの城に行く時に、すれ違ったおじいさん」 そう言うが早いか、まだポカンとしているせつなをその場に残して、ラブは老人に駆け寄った。 「大丈夫? 持つよ、おじいさん」 そう言いながら、老人が抱えた袋を一緒に持とうとするラブ。それを見て、せつなもようやく思い出した。 あれは、メビウスとの最終決戦のために、ここラビリンスにやって来た時。ラビリンスの人々の列に紛れてメビウスの城に向かおうとした四人の近くに、大きな荷物を抱えた彼が歩いていたのだ。 (確か、この人がバランスを崩して、そして……) 咄嗟に助けようとしたラブを、列が乱れると見つかるという理由で、せつなは止めた。その時は、彼が無事体勢を立て直して、事なきを得たのだが。 (あの時ほんの少し見ただけなのに、ラブはよく顔を覚えていたわね) ラブにとっては、困っている人を助けることは息をするくらい自然なことで、それが出来なかったことの方が、心にかかる出来事だったのかもしれない。 そう思うと、何だか申し訳ないような複雑な気持ちで、せつなは老人とラブの元へと駆け寄った。 「結構重いね~、この袋。何が入ってるの?」 「肥料だ」 「へぇ。これから畑に撒くの?」 「ああ」 「あたしも手伝おうか!」 「いや」 ラブが袋に手を掛けながら、明るい声で老人に話しかけている。だが、老人の返事は極めてそっけなかった。特に不機嫌そうなわけではない。ただ聞かれたことに、必要最小限な答えを返しているだけだ。 やがて、肥料の袋を畑の隅に置いた老人は、ゆっくりとせつなの方に向き直った。 「すみません。次の料理教室の日程が、変更になりそうなので――」 そう老人に説明しながら、せつなはそっと唇を噛みしめる。せつなの話を聞いている老人のねずみ色の瞳はぼんやりとしていて、その反応は事務的以外の何物でもなかった。 (この人は今でも、まだ管理されていた頃のラビリンス人、そのものだわ) ここに畑を作ることになった時、近くの居住区に住む人々に向けて、畑の世話をする人を募る知らせが出された。彼はそれに応募してきた、数少ない一人だ。 だからもっと新しいことに興味を持っている人物なのかと思ったのだが、会ってみると、彼はせつなの想像とは全く違っていた。 仕事は黙々とこなしている。ラビリンスで野菜を路地で育てるためには何が必要か、サウラーが事前に様々なことを調べて書き記していたのだが、それを見てきちんと作業をしているらしい。 だが、それだけだった。果たして野菜作りに興味を持っているのか、はたまた自分が作った野菜のことをどう思っているのか、まるでわからない。 何も考えていないかのように、淡々と仕事をこなし、淡々と規則正しい生活を送る――それは確かに、かつてのラビリンスの人々の生活そのものと言えた。 次の料理教室についての連絡を一通り終えて、せつなが再び頭を下げる。するとそれを待っていたように、ラブがニコニコと老人に歩み寄った。 「ねぇ。今度のお料理教室には、おじいさんも参加してみない?」 「いや……遠慮しておく」 やっぱり、とせつなが心の中で呟く。せつなも何度か彼を料理教室に誘って、そのたびに断られているのだから。だが、ラブは簡単には諦めなかった。 「そう言わないでさぁ。みんなでお料理するのって、すっごく楽しいんだよ?」 「……」 「みんなで作ったハンバーグも、すっごく美味しいし」 「食事は……栄養がとれればそれでいい」 「じゃあじゃあ、ためしに試食だけでも来てよ! すっごく賑やかなんだ。みんなが自分で作ったハンバーグを交換して……」 「すまん。私はそういうものは、苦手なんだ」 老人の、すまなそうながらキッパリとした拒絶の言葉に、ラブも口をつぐむ。すると、今度はせつなが静かに口を開いた。 「おじいさん。おじいさんがここでの仕事を選んだ理由って、もしかして……」 「もしかして……何? せつな」 そこで言いよどんだせつなの顔を、ラブが心配そうに覗き込む。 「その……ここなら一日、ほとんど誰とも会わずに居られるから、ですか?」 せつなの問いに、老人は相変わらず何の感情も読み取れない表情で、ああ、と頷いた。老人の顔をひたと見つめていたせつなの瞳が揺らぐ。それを見て、老人は目を伏せると、フーッと長く息を吐き出した。 「メビウスに管理されていた頃、私たちは皆、人のことには無関心でした」 「ああ」 せつなの言葉に、老人が短く応じる。 「その方が……おじいさんには、居心地がいいですか?」 「わからん」 老人は相変わらずそっけなく答えると、腰を伸ばすようにして、公園の並木の方を見つめた。 「今のラビリンスは、あの頃とは違う」 「そう……思いますか?」 「ああ。きっとこれから、もっと変わっていくだろう」 我知らず頬を緩めたせつなの方に、老人が視線を戻す。 「それが人としての、本来の姿なのかもしれん。だが……今のラビリンスは私には少々賑やか過ぎて、どうしていいかわからんのだ」 野菜畑が一瞬、しんと静まり返った。ああ、この静けさこそが、この人には馴染みの日常なのか――せつながそう思った時、沈黙を破ったのは、ラブだった。 「大丈夫だよ。お料理教室で出会った人たちは、みんな優しい人たちだったよ。だから、おじいさんにもきっと友達が出来るって」 「友達? よくわからんが……。もう老い先短い身だ。このまま静かに、一人で過ごさせてくれ」 「でも!」 静かにかぶりを振る老人に、ラブが詰め寄り、なおも言い募ろうとする。 するとその時、老人がわずかに顔を上げた。視線はラブを通り越して、畑の入り口辺りを見ている。 至近距離からその顔を見ていたラブは、心の中で首を傾げた。今までまるで生気のなかった瞳が、何だか少し嬉しそうに輝いたように見えたのだ。 ラブが思わず後ろを振り向いて、そのまま笑顔になる。そこに立っていたのは一人の少女。昨日ラブが給食センターを訪れた時に出会った、あの少女だった。 「こんにちは。あなたとは、よく会うね」 ラブが明るく声をかける。が、答えは返ってこなかった。彼女は目を大きく見開いて、何かにひどく驚いたような表情で、ラブとせつなを交互にみつめていたのだ。 「お前……どうしてそいつと、一緒に居るんだ」 「そいつって……ああ、せつなのこと? せつなは、あたしの大切な友達だから」 かすれた声で問いかける少女に、ラブが満面の笑みで答える。が、それを聞いて、少女の瞳が大きく揺れた。 「ということは、まさか……お前もプリキュアなのか!」 「あ……アハハ、うん。実は、そうなんだ」 少女の問いに、軽い調子で答えて頭を掻くラブ。それを見て、少女がわなわなと震え出す。 「え……ちょっと、大丈夫?」 「ラブ、待って!」 心配そうに駆け寄ろうとするラブの手を、せつなが掴んで止めた。 少女の瞳が、二人を――いや、ラブを睨み付ける。 燃えるような赤い眼差し。そこに宿るのは今や戸惑いではなく、驚愕と――怒り。 食いしばった奥歯の間から、ごく小さな呟きが漏れる。その言葉を、せつなだけは聞き取ることが出来た。 「こんなヤツに……こんなヤツに、メビウス様は倒されたと言うのか……!」 ハッとした瞬間、ラブの腕を掴んでいたせつなの手が緩む。それを待っていたかのように、ラブが心配そうな表情で、一歩、二歩と少女の方に歩み寄った。 「ねえ、ホントにだいじょう……」 「ラブ、下がって!」 「寄るなっ!」 せつなが高い声で叫んだ瞬間、ラブの体があぜ道に転がる。少女がラブを突き飛ばしたのだ。 慌ててラブを助け起こしたせつなは、ラブと老人を庇うように、少女の前に立った。 「なんてことするの! 彼女は、今はプリキュアじゃないわ」 「それがどうした」 「一般の人間に手を上げるなんて、かつても許されていなかったはず。“己の力は”――」 激しい口調でそう言いかけたせつなが、そこで口をつぐむ。そして、気持ちを落ち着けるようにひとつ大きく深呼吸をしてから、努めて静かな声で言った。 「メビウスは、もう居ない。それはあなたもわかってるんでしょう?」 「黙れ! お前がそんなことを言えた義理か」 吐き捨てるようにそう言って、少女が不敵に笑う。 「さっきお前が言いかけた掟を、正確に言い直してやる。 “己の力は、メビウス様のために。それ以外のものに使ってはならない” そうだったわね、先代――私の前の、イース!」 今度はせつなの方が驚きの表情を浮かべた後、その顔が苦しそうに歪んだ。 「私は今でもメビウス様の僕。そのメビウス様を倒したプリキュアを、みすみす放ってはおけぬ!」 「……どうしてもラブを傷付けると言うのなら、私が相手になるわ!」 二人の少女が睨み合ったまま、ゆっくりと構えを取る。が、次の瞬間。 「二人とも、やめてっ!」 凛としたラブの声が、辺りに響いた。 少女が、ふん、と鼻を鳴らしてから、構えを取ったままで後ずさり、やがて一目散にその場を駆け去る。それを見届けてから、ラブはまだ構えを解いていないせつなの肩に、ぽん、と手を置いた。 せつなが、ハッと我に返ったように、自分の両手をしげしげと見つめ、続いてぼんやりとラブの顔に目をやる。 「……せつな?」 「ラブ……。私、今、あの子と……」 「大丈夫。大丈夫だよ、せつな」 ラブは、その場に棒立ちになっているせつなの体を抱きしめると、その背中を優しく撫で始めた。 せつなの体はひどく強張っていて、その背中は微かに震えている。ラブは、せつなを抱く手にギュッと力を籠め、震えが収まるまで、何度も何度も、優しく背中を撫で続けた。 ☆ その夜、星ひとつ無い空の下、ラビリンスの人々が深い眠りに就いた頃。 今は廃墟となっているメビウスの城の跡地に、こっそりと近付く小さな影があった。 影は跡地に侵入すると、爆発の及んでいなかった地下の部屋から、ある小さな物を持ち出した。そして闇に紛れて街を駆け抜けると、いずこへともなく、消えてしまった。 ~終~ 第5話:届かない声へ
https://w.atwiki.jp/lpnagoya2011/pages/24.html
『ラブプラス』(Loveplus)は、2009年9月3日にコナミデジタルエンタテインメントからニンテンドーDS向けに発売された恋愛シミュレーションゲーム。 本項では次に挙げる作品についても記述する。 次回作にあたる『ラブプラス+』 ニンテンドー3DS用ソフト『Project ラブプラス for Nintendo 3DS』 iPhone/iPod touch向けアプリ『ラブプラス i』 アーケード版『ラブプラス アーケード カラフル Clip』 メダルゲーム『ラブプラス MEDAL Happy Daily Life』 キャッチコピーは「国民的G・F(ガールフレンド) デビュー!!」。『ラブプラス+』のキャッチコピーは「日本全国ラブプラス現象(まつり)!!」。 wikipedia参照 詳細は、公式ホームページをご覧下さい ラブプラス ラブプラス+
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/710.html
「チョコレート・ダウン」4 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 掛け布団の下に熱気がこもる。ラブがいったん出ようと提案したものの、「ラブの泣き声が階下にまで響いてしまうから」という理由で却下された。 せつなの言葉を聞いても、そっか、泣かされるんだと他人事のように思ってしまうラブ。せつなの両腕に抱きすくめられた全裸のカラダが、心地よさにとろけてしまっている。 熱いキスでくちびるを溶け合わせる。愛しいという感情は、くちづけの快感を高める媚薬だった。二人のくちびるが恍惚感にみちびかれて、何度でもキスを繰り返してしまう。 「ふふっ、あたしとせつな、さっきからずっとキスばっかりしてるね」 仰向けのカラダで、柔らかに被さってくるせつなの体重を受けとめながら、またキス。大好きな相手の背中に両腕を絡め、ぐっと抱きしめる。彼女の熱い体温が自分の肌に密着する感触は、肉体的な快感以上に、ラブの心をよろこびで満たしていく。 せつなのくちびるが濡れた音を小さく鳴らしてキスを解き、ラブの耳もとで熱い吐息をこぼしつつささやいた。 「キスは飽きたの? じゃあ、そろそろ泣いてみる?」 いじわるな声音に、鼓膜がゾクッとした。ラブがうなずくよりも早く、その耳に「ちゅっ」とくすぐったい音を立てて最初のキスが降ってきた。「んんっ」と甘くうめいたラブが首をすくめる。 ちゅっ・・・ちゅっ、ちゅっ、ぢゅっ・・・ぢゅぢゅぅ・・・ちゅっ、ちゅっ・・・・・・。 こまやかなキスに交じって、強く吸い付いてくる感触。いったん耳から口を離したせつなが、上下のくちびるを舐めて唾液で濡らし、再び軟らかなキスの責めを行う。 「んんっ、んっ・・・あーっ、あ゛っっ!」 くすぐったさに、ラブがたまらず顔をそらそうとした途端、ほっそりした指にあごがつかまれて固定されてしまった。こそばゆいキスの責めは、さらに激しさを増した。 「んんんっ・・・やだっ、あっ、せつなっ・・・あぁんッ、もおっ、・・・ああっ!」 どうすれば女の子のカラダが気持ちよくなれるのか、さっきラブに教えてもらったばっかりだ。まだその興奮は、全身の肌の下で熱い温度を保っていた。 愛情の分だけ、いじめてあげる。 せつなの口から舌先が伸びて、キスで責め立てていた耳の輪郭を、ツーっと静かになぞってゆく。ラブが「んっ・・・ン゛ンンッ!」と両目をぎゅっと閉じてうめいた。 背中に巻きつくラブの両腕のチカラが、強くなったり弱くなったり・・・・・・。快感にカラダを溺れさせている彼女が可愛くて、せつなは口元を微笑のカタチに緩めた。 ――― 大好きよ、ラブ。 「これから、もっと気持ちのいい部分をいじめてあげる。でも、その前に簡単なクイズ」 暗闇の中、ラブの顔を一瞬だけ見つめて、反対側の耳にもくちびるを沿わせる。 「さっきラブにいじめられていた時、私のカラダの中で一番変になった場所はどこ? ヒントが欲しかったら、自分のカラダに訊きなさい」 答えを待っている間に、ラブの耳の内側でちろちろと舌先を躍らせる。ブルッ・・・と震えるラブの裸身を自分のカラダで押さえ付け、濡れた耳たぶに「ちゅっ」と甘いキス。そのまま口を付け、唾液を絡めて「じゅるっ・・・ちゅるっ・・」と、わざといやらしく音を立て、ねぶるように耳をしゃぶり出す。 「ふあっ・・・あっ、きもちいいよぉっ・・・」 ラブの右肩の丸みに指をすべらせる。それに反応した彼女の背中の右側が、ぴくんっ、と小さく跳ね上がった。耳を責められているのに、ちゃんとこっちも感じてくれるのが嬉しい。 (ラブ、きれいな・・・・・・カラダ・・・・・・) 日々のダンスレッスンで磨き続けてきた少女の肢体。服の上からでは分かりにくいが、こうやって一糸まとわぬ姿になると、意外と隙のないプロポーションだった。今みたいに密着するほど強く抱き合えば、彼女のキメこまやかな肌を通じて、躍動性にあふれている柔軟な筋肉の付き方が伝わってくる。 せつなは溜め息をこぼしそうになった。このカラダ、自分だけのものにして毎日いじめてみたい。気持ちよさで泣かせてみたい。 せつなの背にすがりつく手が、ビクンッ、と震え ――― ぎゅっと強くしがみついてくる。耳孔を舌先でクリクリとほじられるのが、ひどくくすぐったかったらしい。 「せつ・・・なっ、答えるから・・・待って・・・・・・あっ」 「待たない。許してほしかったら、早く答えて」 ゾクゾクゾクっっ・・・とこそばゆさにうずいている部分を、さらにくすぐりまわす舌先の責め。耳が気持ちよさに狂わされてしまいそうで、ラブが無我夢中で答えを口走った。 「ひいっ! あ、赤ちゃんを・・・産む所・・・・・・せつなが赤ちゃんを産む所っ!」 自分にとって、せつなにいじめられるたび、一番よろこびにうずいてしまう場所がそこだから・・・・・・。 「じゃあ、答え合わせ」 耳から口を離したせつなが、背中に抱きついていたラブの右腕を優しくほどいて、自分の両太ももの間へとエスコートしてゆく。 「ここをさわって」 「うん」 緊張。 せつなの手に導かれる指先が、ぬるり・・・とした温かい湿り気に触れる。熱くとろけた肉の軟らかさ。暗闇で視覚が使えない分、触覚は鋭敏になっているのかもしれない。ふれられただけで、処女の秘所肉がピクンと喘いだのがハッキリとわかった。 「せ、正解よ、ラブ。ご褒美を・・・あげるわ」 声が震えているのに平静なふりを装うせつな。もう少しさわってあげたいと思ったけれど、くちびるを乱暴なキスに奪われて ――― 。 「く・・・うっ・・・」 口を固くふさがれたラブが、喉の奥でうめいた。あたしの手にさわられて興奮したのかな、と頭の隅で考える。今まで最も熱いキスだった。それがくちびるからあごへ、そして喉へ・・・・・・鎖骨に軽く寄り道してから、ついには胸まですべり落ちてきた。 「ああ・・・せつな・・・」 思春期の乳房のふくらみに、愛しげなくちづけが這う。やわらかな弾力を味わうくちびるは、何度もラブの乳房にキスを繰り返してきた。 「あっ、やっ、ああっ、くすぐったいよぉ」 「ふふっ、ラブったら、本当にかわいいっ」 くすぐったい快感に身をよじらせているラブの胸に、思わず顔を押し付けてしまう。まだ中学生の小ぶりな乳房だが、頬ぐらいなら乗せられる。瑞々しい柔肉のクッション。 「ふああぁっ!」 髪の毛がくすぐったかったらしく、ラブの肌が、ぶるるっ・・・・とわななく。 (ラブのために、今から面白い事をしてあげる) せつなの口が、うら若き乳房の先端を甘くくわえる。キュッとこわばっている乳首を熱く濡れた舌で舐め転がしてから、上下の歯でそっとつまむ。 「んっ、くはっ、せつなっ・・・ああぁんっ、ふああああーーっ」 最初はキスかと思ったけれど、違った。 ラブがせつなに対して行った、指による胸の先っぽいじめ ――― これを彼女は歯と舌とくちびるを使ってやっているのだ。 「だめっ、あああっ・・・すごいっ、せつな・・・あう、んんッ・・・あはぁっ! ああっ、せつなぁっ」 強めに吸いしゃぶってビンビンに勃(た)たせた乳首を、チロチロチロっ・・・っとこまやかに舐め洗う舌の素早い動き。次は硬く白い歯も交えて玩(もてあそ)んだ。 尖らせた舌先で乳頭をクニクニといじりまわしながら、たまに甘噛みによる硬い刺激を与えてラブの興奮を煽る。せつなの予想通り、軟らかな舌で舐められている時は、甘くとろけた泣き声を上げているが、甘噛みしてやると、乳首を強く噛まれる痛みを想像して、急に声のオクターブを跳ね上げる。 ――― こわがっている声だけれど、嫌がっている声じゃない。 逆にせつなのほうがゾクゾクと興奮を煽られて、腰の奥を熱くうずかせてしまう。 「ああんっ、ダメだよぉ、せつな・・・・・・、噛んじゃダメだよぉぉっ」 歯を当てて、噛むふりをしてやるだけでも効果はあった。せつなと同じ場所が熱くうずいて仕方ないのか、両太ももを蠱惑的によがらせる。 普段ダンスで溌剌とした汗を流しているカラダが、いやらしい肉の悦びに溺れ、もっとせつなに貶められたいと願っている。せつなの口がもう一方の乳房に移ると、今までいじめられていた乳房の先へせつなの手を招いた。 「そんなにいじめられたいの?」 「だって、せつなに愛されるのって気持ちいいもん。・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あああっ」 乳房の先を「ぢゅぢゅぢゅぢゅッッ」ときつく吸引されて、ラブが白い裸身を弓反らせて喘いだ。 「あっ、ダメっ・・・せつなぁ・・・せつなぁっ!」 せつなの黒髪にあらっぽく手櫛を通して、何度も彼女の名を繰り返す。 左右の乳房の先で、甘い痺れが微弱電流のように這いまわり、15歳の少女のカラダに、淫らな肉欲に堕ちるよろこびを植えつけてくる。ダンスでは絶対にかかない妖しい汗で肌を濡らしながら、ベッドの上で、痙攣するみたい小さく跳ね悶え ――― 。 びびくぅっ・・・!! いきなり腰の奥に、えも言われぬ快感の波が沸きあがった。ラブのカラダの震え方に驚いて、ただならぬ様子でせつなが乳房から顔を上げた。 「大丈夫っ、ラブっ? ――― ここなの?」 彼女の身を案じるせつなが、とっさに原因と思しき場所に手を伸ばそうと・・・・・・。しかし、それに気付いたラブが「待ってっ!」と自分の手で両太ももの付け根をガードした。 「待って、あたしのここ・・・・・・今、すごくいやらしくなってるから・・・・・・」 もしもさわられていたら ――― そう思うと、死ぬほど恥ずかしかった。カラダが小さく震えてくる。いったんは引っ込んだせつなの手が、それを感じて、ラブの背中とベッドの間に潜りこんできた。強く抱きしめられる。 「安心して。ラブのカラダはただ、大好きな相手の赤ちゃんを産みたがっているだけだから。なんてことのない、普通の現象なの」 簡単な生殖・出産の知識なら、せつなも持っていた。ラブの頬へ軽いキスを這わせて、恥ずかしがりながら言葉を続ける。 「私の赤ちゃんを産む所も、きっとラブと同じぐらいの状態よ。ラブを欲しがって、ガマンできなくて、すごく・・・いやらしい・・・・・・」 じっと黙って耳を傾けていたラブが、お返しのくちびるを「ちゅっ」とせつなの頬に重ねてから、深呼吸で恥ずかしさを取り払う。そして、顔をせつなにまっすぐ向けて伝えた。 「あたし、結婚させたい」 結婚したい ――― ではなく、させたい。 せつなにはすぐに意味が通じた。 「わかったわ。ラブ、わたしの言う通りにして」 「チョコレート・ダウン」5へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/231.html
『氷解』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY 1 夕陽で赤く染まった室内に湿った荒い息遣いと濡れた音が響く。 ごく普通の居心地の良さそうなリビング。けど、その真ん中に据えられた ソファーの上ではとても普通とは言えない光景か繰り広げられていた。 絡み合うのは二人の少女。一人は着衣をこれでもかと言わんばかりに乱され、 喘ぎながら咽び泣いている。 その上に全裸の少女が覆い被さり、下になった少女の全身をまさぐっている。 せつなが着ていたのは生成りのシャツワンピース。そのボタンを腹まで外され 胸元も露にはだけられ、白いブラはずり上げられ乳房を剥き出しにされている。 スカートは腰の上までたくしあげられ、片方の足をソファーの背に、もう片方は 床に落とされこれ以上は無理なくらい足を開げさせられている。 ラブはその足の間に顔を埋め、無心に舌を使う。 ピチャピチャと犬が水を舐める様な音をたて、ガクガクと腰を震わせる せつなを押さえ付けながら攻め立てる。 「はあっ……はあっ…、ふぅっ…んん!」 ラブの舌が動く度に足首に下着が絡んだままの足がピクピクと揺れる。 せつなはラブの湿ったままの髪を力無く引っ張りながら、 ただひたすら気の狂いそうな性感に耐えていた。 2 ラビリンスにいた頃のせつなは、最前線で働く為の戦闘要員だった。 幼い頃から己を律し、鍛え、学び、一切の欲望を排除した生活を送っていた。 性的な知識が無いわけではないが、それは人間の体の構造を学ぶ上での 一行程であり、生殖の為のものであり、まだ年若く、しかも戦士として いつ出撃命令が出るか分からない自分には無縁のものだった。 仮に後に遺伝子を残す為に妊娠・出産を命じられる事はあったとしても そんな事はその時になればお膳立てが整っているはずで、自分はただ 言われた通りにするだけの事だった。 だから何も知らなかった。他人の手が、唇が触れるとどうなってしまうのか。 真摯な眼で見つめられ、抱きすくめられたら動けなくなってしまう事を。 ラブの冷えきった唇に自分の唇を塞がれた時、せつなは反射的に 相手をはね除けそうになった。 でも、ラブの眼を見てしまった。ほんの数センチ先にあるラブの瞳。 鏡の様に静かなのに、その奥に狂おしい程の思いを押し込めていた。 どんなに欲しても与えられない。身を捩る程に渇望しても 決して自分には手に入らない。 苦しくて苦しくて、だからそんな思いは最初から感じて無いんだ、そんなもの 欲しがる自分なんて存在しないんだと自分を騙し。 けど時折暴れ出す心を御し切れなくて…。 そう、かつての自分だ。 逃げちゃいけない。そう思った。ここで少しでも拒否する仕草を見せれば ラブの心には取り返しのつかないヒビが入ってしまう。 体から一切の力が抜けた。 (ラブ…大丈夫よ…。) 貴女は私とは違う。どんな闇と向き合っても染まってしまったりしない。 それに、ちゃんと伝えなければならない。 貴女が心から望んでいるモノ。それは決して手の届かないモノではないのだ…と言う事を。 3 ラブは無抵抗なせつなの体を恣に貪る。まだ14歳の少女に愛撫の仕方など 分かるはずもない。 ただ同じ体を持った同性。どこをどうすればどんなふうに感じるかは分かる。 慣れないうちは敏感な部分への強い刺激は快感より苦痛の方が大きいと言う事も。 ラブはわざと敏感な部分を執拗にいじくり、弄ぶ。 せつなの反応を見れば、乏しい自慰の経験しかない自分よりも遥かに 性的な経験がないように感じられる。 もしかしたら、一度も自分で触れた事すらないのかも知れないと思った。 乳首に歯を立てる度に大きく背を反らせ、陰核の柔皮を無理やり捲り 中の突起を強く吸えば、啜り泣きどころではない悲鳴に近い泣き声をあげる。 ぴったりと閉じた膣に無理やり二本の指を捻り込む。指を押し出そうとするかのように きつくすぼまった肉が蠕動する。 「あっ…あっ…あぁっ。……いっ…つぅ……。」 指が深く埋まって行くにつれ、せつなはか細く泣き、目尻に涙が溜まっていく。 (痛いんだろうな。) ラブはそう思いながらも指を根元まで納め、内壁を広げるようにグニグニと 動かす。 ラブ自身も自分を慰める時に、こんなに深く指を入れた事はない。 せつなにとってもこの行為が苦痛でしかない事くらいわかる。 唇を抉じ開けるように舌で口腔内を蹂躙する。柔らかな下唇に 歯を立てると、ラブの中に鉄の香りが滲む。 指で中を犯しながら、膨れた外側の突起を捏ねる。 せつなの体が跳ね、塞いだ唇の隙間からくぐもった呻き声が漏れる。 「…ぅふ……んぅっ…んくっ…」 せつなの痙攣がある程度治まると、ラブは唇を解放し、ゆっくりと指を引き抜いた。 ぬらぬらと光る指を見ると体液に薄赤い色が混じり、下敷き になっているワンピースにも同じ色の染みが出来ている。 それが破瓜の血になるのか、それとも乱暴な挿入で粘膜が傷付けられて 出たのかはわからない。 でも、相当苦しい思いをさせただろう事は想像が付く。 (こう言うのでも処女を奪っちゃった事になるのかな……) ラブは暗い喜びを感じている自分に苦笑した。 せつなはここまでされても抵抗の片鱗すら見せない。 『イヤ。』『やめて。』と無意識に口をついて出そうな言葉すら口にしない。 ただ、涙を流しながら責め苦のようなラブの愛撫に打ち震えている。 4 「どうして?」 せつなは最初、自分が無意識に言ってしまったのかと思った。 でも、その言葉を発したのはラブの方。 霞む眼をそろそろと上げるとラブが見下ろしていた。 「ねぇ、どうして、せつな?嫌じゃないの?嫌でしょ?こんなの。」 確かにせつなならラブを跳ね返す事くらい訳はない。 プリキュア状態ならともかく、生身なら身体能力も体力も せつなの方が遥かに勝っている。 (あたし、同情されてるの?可哀想って思われてる?) もしそうなら惨め過ぎる。罵倒されても、軽蔑されても仕方がない。 でも憐れまれるのは嫌だ。どこまでも自分本位だとは分かってる。 それでも…… 「それともなに?せつな、こう言うの好きなの?気持ちよくなっちゃったの?」 恐らくラブは下卑た笑いを浮かべたつもりだったんだろう。 でも、せつなには、それは泣きたいのを堪えて顔をくしゃくしゃにしてる 小さな子供にしか見えなくて…。 「だって、ラブが泣いてるから。」 いつか、どこかで聞いたような台詞だ。あなたの心が泣き叫んでる……。 辛くて、苦しくて、どうしようもない……いっそすべてを壊してしまいたい程に。 「…なに?……それ。」 やっぱり同情されてるの?ラブが本当に泣きそうになった時、 「泣かないで……。」 ラブの頭はせつなの胸に抱き込まれた。 「私…ラブが好きよ…。」 私は、上手く伝えられるだろうか……。 5 ラブはせつなの胸に顔を埋めたまま、動けない。 せつなの言った言葉…。 『好きよ』確かにせつなはそう言った。反射的に心が歓喜に震える。 ずっとずっと、欲しくて堪らなかったことば。 でも……、それは……。 「…違うでしょ?違うよ!!せつなが言ってるのと、あたしのは……!」 全然違うんだよ。 分かってた。今のせつなはあたしの言う事なら何でも聞きかねない。 どんな事でも、ラブが望むなら…と。 でも、そんなものは違う。欲しかったものじゃない。 ここまで酷い事をして、それなのにせつなは好きと言ってくれて。 でも、違う。どこまで自分勝手なんだと思う。 せつなの身も心もこれ以上無いほど傷付けて、それでも満足できない。 一体、どうなれば満足なんだろう。 「…そうね。違うのかも知れない。」 頭の上から柔らかい声が降ってくる。 さっきの自分の言葉への返事。違うと言ったのは自分なのに ずきりと痛みが走る。 一瞬、体を強張らせたラブの髪をせつなは優しく撫でる。 「でも、…私、分からないんだもの。……だって、」 誰かを大切に思ったのも、誰かに大切にされたのも、誰かを好きになったのも、 ラブが初めてだから。 私には何もなかった。守りたいものも、愛しいものも。 空っぽの心。『メビウス』と言う偶像にその空白を埋める事を求め、 渇いてひび割れた水差しに、溜まるはずもない水を注ぎ続けていた。 メビウス様の為に メビウス様の為に メビウス様の為に ラブと出逢い、ラブと触れ合い、いつの間にかひび割れは消えていた。 少しずつ、心に溜まっていく何か。 それが何なのか、今も表す言葉を私は持たない。 でも、これだけは分かる。こんな気持ちはラブに対してしか生まれない。 盲目的に誓っていた忠誠とは違う。 ただ依存の対象が代わっただけだと言われるかも知れない。 そうかも知れない。もしそう言われても、私には明確な反論は出来ないかも知れない。 でも私はもう決めてる。ラブしかいらない。 この先、例えどんな出会いがあってもラブ以上に大切な人は出来ない。 ラブが最初で最後の、一番大切で愛しい人。 仲間、家族、友達…。今の私には大好きな人が沢山できた。 決してラブ以外の人がどうでもいいわけじゃない。 その人達を守る為にも、私は命懸けになれる。 でも、その人達全てを合わせても、ラブ一人にはかなわない。 6 せつなは拙くことばを綴る。 どう言えば分かってもらえる? どうすれば伝わるんだろう。 ラブには知られてはいけないと思ってた。友達でいなきゃ。家族にならなきゃ。 ラブがいないとダメだと思われたくない。ラブに依存しきってると思われたくない。 ラブにはラブの世界があるんだから、邪魔しちゃいけない。 自分だけ、見て欲しいなんて、絶対に、言えない……。 だって重すぎるもの。人ひとりの心を丸ごと被せられるなんて。 ラブは分かってない。どんなに私がラブを好きか。 ラブが想像するよりも、ずっと、ずっと…。 隠しちゃいけなかったのかな。鈍い私はラブが追いつめられてるのに ちっとも気付かなかった。 いつもラブは自分の事より、人の事で怒って、泣いて。 昔からそうだったって聞いてる。 だから、ラブは多分泣いてしまうだろう。 せつなに酷い事をした。 せつなを傷付けた。 そして、それ以上に自分を傷付けてしまうかもしれない。 ごめんね、ラブ。本当にごめん。 ……もどかしい……。 どんなことばでも伝えきれる気がしない。私のことばはどうしてこんなに拙いんだろう。 せつなは全身で強く強く、ラブを抱き締める。 極度の緊張と過度な刺激に晒された体はミシミシと軋み、力が入らない。 それでも強く。ラブを丸ごと体の中に包み込めるように。 「分かってないのはラブの方なんだからね!」 last 「……っう…うわ、うわああああーーん!!」 ラブは突然、子供のように声をあげて泣き始めた。 「…っごめ……ごめっ…なさっ…!…… ごめんっ…なさ…い! ひっく…ぅえ、せっ…、せつなっ…せつなぁ……せつな………」 「うん……、ラブ…」 「ホ…っトに……ホントに、ごめんなさい!」 「……うん……」 優しく優しく頭を撫でられ、きつく体を抱き締められ、どのくらい泣いただろう。 涙と共に凍えた塊が溶け出していく。冷えきった体をせつなが暖めてくれる。 溶け出した塊も全部は無くならないかも知れない。 一度向き合ってしまった剥き出しの欲望は、 そうそう簡単には自分を解放してくれないかも知れない。 でも、きっと大丈夫。せつながいるもの。 醜い欲望も身勝手な独占欲も全部はせつなが受け止め、洗い流してくれた。 ごめんなさい、せつな。謝っても傷付けてしまった事は取り返せない。 でも、もう傷付けたりしないから。あたしもせつなを丸ごと包み込みたいから。 身を起こしたせつなは、少し震える唇で羽根のように軽くて優しいキスをくれた。 「ラブは、言ってくれないの?」 「……?」 「私はちゃんと言ったのに。ラブは言ってくれない、どして?」 「……あ………」 いたずらっぽく微笑むせつな。言われてやっと気がついた。 あたし、一度もちゃんと言ってないや。 あたしは一つ大きく深呼吸して… 「あたしは、せつなが大好きです。世界で、一番、せつなが好き。」 今度はあたしからキスを送る。できる限り優しく、でも、 せつながくれたキスよりはちょっぴり深く。 ラせ1-46は、おまけです
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/4869.html
【TOP】【←prev】【PlayStation】【next→】 REFRAIN LOVE あなたに逢いたい タイトル REFRAIN LOVE あなたに逢いたい リフレインラブ 機種 プレイステーション 型番 SLPS-00753 ジャンル 恋愛シミュレーション 発売元 リバーヒルソフト 発売日 1997-3-14 価格 6000円(税別) タイトル リフレインラブ あなたに逢いたい RiverhillSoft BEST 機種 プレイステーション 型番 SLPS-02151 ジャンル 恋愛シミュレーション 発売元 リバーヒルソフト 発売日 1999-7-1 価格 2800円(税別) タイトル リフレインラブ あなたに逢いたい Major Wave シリーズ 機種 プレイステーション 型番 SLPM-86654 ジャンル 恋愛シミュレーション 発売元 リバーヒルソフト 発売日 2001-2-22 価格 1500円(税別) 【TOP】【←prev】【SEGA SATURN】【next→】 リフレインラブ あなたに逢いたい タイトル REFRAIN LOVE リフレインラブ あなたに逢いたい 機種 セガサターン 型番 T-5308G ジャンル 恋愛シミュレーション 発売元 リバーヒルソフト 発売日 1997-11-27 価格 6800円(税別) リフレインラブ 関連 SS リフレインラブ あなたに逢いたい PS REFRAIN LOVE あなたに逢いたい REFRAIN LOVE 2 駿河屋で購入 プレイステーション セガサターン
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/233.html
『雨音』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY 耳を打つ雨の音でラブは目を覚ました。時計を見ると0時を少し回った所。 せつなの部屋へ行くつもりだったのに、つい眠ってしまったらしい。 ベランダへ出ると風向きのせいで少し顔に飛沫がかかる。 そのままそっとせつなの部屋へ滑り込む。 「…せつな、起きてる?」 ベッドの傍まで行き囁くように声をかけると、せつなは身を起こして ラブの腹のあたりに顔を押し付けてくる。 「せつな…。」 髪を撫でるとラブの腰に腕を回したまま、せつなは顔を上げ、 潤んだ視線でキスをねだる。 体の奥から情欲が湧いてくる。唇を啄みながら自分もベッドに倒れる。 パジャマの裾から手を潜り込ませ、掌で乳房を包み込む。 せつなの肌はもう熱く火照っており、まだ触れてもいなかった 乳首が固く尖り、既にせつなの体は準備が整っている事を告げていた。 「…今日はエッチな方のせつななんだね。」 ラブはわざと少し笑いを含んだ声で囁く。 体の関係になって、もう随分たった。 せつなは未だに不慣れな処女のように恥じらい、 快感に呑まれるのを怖れるよう声を殺し、それでも堪えきれない 快感に押し流され、あられもない声をあげて、泣く。 でも時々、我を忘れてラブを求め、乱れる事がある。 (…ねぇ、ラブ…もっと…!お願い…足りないの……! ……もっと…お願いだから…!) 潤んだ瞳でねだられ、そんな時はラブもいつも以上に貪欲に、 どんな快感も逃がすまいとお互いに貪りあう。 今夜のせつなもそうだ。 ラブの問いには答えず、ただ体を擦り寄せ 愛撫の先を促す。 「いつも雨の日だね…。」 この頃気が付いた。せつなが乱れるのは、決まって今夜のような雨の夜。 激しく乱れ、甘い声でラブの耳を楽しませ、意識を失うかのように眠る。 まだ荒い息のせつなは目を伏せ、ラブの胸元に頭を寄せる。 「……眠るのが怖いの…。」 雨の夜は眠りに就くのが怖いのだ、とせつなは言う。 「…このまま目が覚めないんじゃないかと思うの…。 もし覚めても、そこはこの部屋じゃなくて、あの洋館だったら…。 私はイースのままで、今までの事が全部夢なんじゃないかって……」 そう思うと恐くて眠れない…。だから…他に何も考えられなくなるくらい、ラブでいっぱいになりたい。 これは夢じゃない。体中でラブを感じて、気絶するように眠って、 目が覚めてもラブが傍にいる。 そうして、やっと安心できる。夢じゃないって。 雨の中で、イースとしての最期を迎えた。 深い闇へ堕ちて行くような記憶は、いつも雨音と甦る。 生まれ変わった喜びと背中合わせに、いつまでも消える事はない。 「……ごめんなさい。」 胸元にせつなの涙を感じる。 せつなの闇は深く、重く、でも切り捨てる事はできない。 謝る必要なんかないのに…。もっと、求めてくれたっていいくらいなのに。 「せつな…愛してるからね。」 ラブは精一杯の愛しさを込めて囁く。 せつなの体が震え、しゃくり上げる声が聞こえる。 「せつなも、パッションも、………イースも……みんな、愛してるから。」 あたしは、ただ抱き締める事しかできない。 でも…、せつなを誰よりも誰よりも愛してるから。 だから、これからは我慢せずに泣いて欲しい。 いつか、あなたが闇の夢を見なくなる日まで。 了
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/931.html
『せつぶん』/Mitchell Carroll ラブ「せつぶんが不足してきた……」 せつな「?」 ラブ「せつな、せつぶんって知ってる?」 せつな「ええ。豆を撒いたりする日のことでしょ?」 ラブ「ちがうよー。糖分とか塩分とかあるでしょ?それのせつな分、略してせつ分」 せつな「??」 ラブ「せつ分を補給するには、接吻(せっぷん)が必要なの」 せつな「!??」 ラブ「いただきまーす」 せつ分補給完了